加湿器を購入する際に、製品スペックで「次亜塩素酸水」対応と記載のあるものを見かけることはありませんか?
それ以外にも街中で消毒用アルコールと並んで次亜塩素酸水が設置されている光景をよく見かけます。
そうなると自然と頭の中で消毒用アルコール=次亜塩素酸水という関係が出来上がり、加湿器に入れて噴霧すると空気中のウイルスを殺せるのではないかという発想が浮かんでくるもの。
このことに関して妻に質問されて気になったので、加湿器に次亜塩素酸水を入れて部屋に噴霧すると抗ウイルス効果が現れるのかどうか調べてみました。
効果はない
【参考情報3 「次亜塩素酸水」の空間噴霧について】 「次亜塩素酸水」の空間噴霧で、付着ウイルスや空気中の浮遊ウイルスを除去できるかは、メーカー等が工夫を凝らして試験をしていますが、国際的に評価方法は確立されていません。 安全面については、メーカーにおいて一定の動物実験などが行われているようです。ただ、消毒効果を有する濃度の次亜塩素酸水を吸いこむことは、推奨できません。空間噴霧は無人の時間帯に行うなど、人が吸入しないような注意が必要です。 なお、ウイルスを無毒化することを効能・効果として明示とする場合、医薬品・医薬部外品の承認が必要です。現時点で、「空間噴霧用の消毒薬」として承認が得られた次亜塩素酸水はありません。 特に、人がいる空間への次亜塩素酸ナトリウム水溶液の噴霧については、眼や皮膚に付着したり吸入したりすると危険であり、噴霧した空間を浮遊する全てのウイルスの感染力を滅失させる保証もないことから、絶対に行わないでください。 |
結論から言うと、次亜塩素酸水を加湿器に入れてウイルスを除去することはできません。
むしろ、危険です。
よく考えてみると当然でウイルスを殺せる濃度=人体にも影響があるので、ウイルスに感染するよりも体へのダメージが多いことさえあるかもしれません。
逆に、体への影響がないほど濃度を薄めてしまうと肝心のウイルス除去効果がなくなってしまうので噴霧する意味がありません。
次亜塩素酸水と次亜塩素酸ナトリウム
参考情報2 「次亜塩素酸ナトリウム」と「次亜塩素酸水」について】
「次亜塩素酸ナトリウム」と「次亜塩素酸水」は、名前が似ていますが、異なる物質ですので、混同しないようにしてください。
「次亜塩素酸ナトリウム」は、アルカリ性で、酸化作用を持ちつつ、原液で長期保存ができるようになっています。ハイターなどの塩素系漂白剤が代表例です。
「次亜塩素酸水」は、酸性で、「次亜塩素酸ナトリウム」と比べて不安定であり、短時間で酸化させる効果がある反面、保存状態次第では時間と共に急速に効果が無くなります。
「次亜塩素酸水」にはいくつかの製法がありますが、このうち、食塩水や塩酸を電気分解して生成した「次亜塩素酸水」には、食品添加物(殺菌料)に指定され、規格が定められたものもあり、食品加工工場における野菜の洗浄などに使われます。
また、次亜塩素酸ナトリウムを原料に、酸を加えたり、イオン交換等をすることで酸性に調整したものも「次亜塩素酸水」として販売されています。これには規格や基準が無く、成分がはっきりしないものもあります。また、「pHを調整した次亜塩素酸ナトリウム」と称して販売する例があり、アルカリ性の「次亜塩素酸ナトリウム」と酸性の「次亜塩素酸水」の混同の一因になっています。このほか、「ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム」などの粉末で、水に溶かすことで「次亜塩素酸水」を作れる商品も販売されています。
厚生労働省

私も今回調べてみるまで知らなかったのですが、次亜塩素酸水と次亜塩素酸ナトリウムは別の物質であるとのことでした。
よく店頭に置いてある次亜塩素酸水を、私は「次亜塩素酸(ナトリウム)水(溶液)」という感じで略して記載しているものと認識していましたが、実際はそうではない「次亜塩素酸水」である可能性があります。
むしろ違う可能性の方が高そうな気がしてきました。
新型コロナウイルス消毒・除菌方法一覧(それぞれ所定の濃度があります)
方法 | モノ | 手指 | 現在の市販品の薬機法上の整理 |
水及び石鹸よる洗浄 | ○ | ○ | ― |
熱水 | ○ | × | ― |
アルコール消毒液 | 〇 | 〇 | 医薬品・医薬部外品(モノへの適用は「雑品」) |
次亜塩素酸ナトリウム水溶液 (塩素系漂白剤) | 〇 | × | 「雑品」(一部、医薬品) |
手指用以外の界面活性剤 (洗剤) | 〇 | - (未評価) | 「雑品」(一部、医薬品・医薬部外品) |
次亜塩素酸水 (一定条件を満たすもの) | ○ | - (未評価) | 「雑品」(一部、医薬品) |
そもそも、手指に対する新型コロナウイルスの消毒・除菌に使用する濃度では次亜塩素酸ナトリウム水溶液及び次亜塩素酸水は皮膚への影響が大きいことから推奨されていません。
むしろ、手荒れの傷口からウイルスが体内に侵入するので身体に害をもたらす製剤です。
医療関係の仕事ということもあり、私はこの知識はあったのでアルコール製剤しか使用していませんでしたが、そうでない方には違いが分かりにくいことは事実です。
まさか効果がないものが店頭に設置されているなんて思いもしませんよね。
店員の方は医療のプロフェッショナルではないので、自分の身体を守ることができるのは自分だけです。
しっかりと知識を高めることが何よりも重要であると言えるでしょう。
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