ジェネリック医薬品は先発医薬品とどう違う?−医療現場での実際

薬局でお薬をもらう時に「ジェネリック医薬品でもいいですか?」と聞かれたことがない人はいないのではないでしょうか。

なんとなく、ジェネリック医薬品は先発医薬品と同じだけど価格が安いものと認識している人も多いはず。

しかし、実際には先発医薬品と「全く同じ」ジェネリック医薬品はほんのひと握りしかなく、ほとんどは有効成分とその含有量以外は同一ではないということをご存知ですか?

薬剤師や医師など薬に携わる仕事をしていない人にはなかなか分かりにくいところであると思います。

そこで、本日は気になるジェネリック医薬品と先発医薬品の違いを現役のMR(医薬情報担当者)が簡単に説明していきたいと思います。

先発医薬品とジェネリック医薬品の定義

現在、医療機関等で保険診療に用いられる医療用医薬品として官報に告示されている(薬価基準に収載されている)品目は約1万4千程度あり、本リストはその内容等をお示ししたものです。

 このうち、新しい効能や効果を有し、臨床試験(いわゆる治験)等により、その有効性や安全性が確認され、承認された医薬品を「先発医薬品」と、また、先発医薬品の特許が切れた後に、先発医薬品と成分や規格等が同一で、治療学的に同等であるとして承認される医薬品を「後発医薬品」(いわゆるジェネリック医薬品)と呼んでいます。

厚生労働省

先発医薬品とジェネリック医薬品の定義は厚生労働省によって上記の通り定められています。

先発医薬品はいわゆる「新薬」と呼ばれるお薬で、日本国内でとある成分(Aとします)が新しい「効能・効果」を有していることが治験で証明されることで承認されたものを指します。

新薬において有効成分は必ずしも新規である必要はなく、あくまでも新しい「効能・効果」を有しているかどうかが判断されます。

例えば、既に「頭痛」を適応症として販売されているA成分を用いて、新たに「下痢」を効能・効果として治験を行い承認された場合はこれも「新薬」です。

それに対して後発医薬品、いわゆるジェネリック医薬品は先発医薬品と「有効成分とその規格(含有量や投与経路)」が同一かつ体内での薬物動態が先発医薬品と概ね一致することで「治療学的に同等である」と承認されたものを指します。

この定義と特許などの関係上、先発医薬品とジェネリック医薬品は「有効成分及び規格」と「薬物動態が概ね一致」してさえいれば添加物まで同じである必要はなく、各社独自の付加価値を与えることができます。

例えば、苦味が強くて飲みにくい新薬があった場合、ジェネリック医薬品を上市する際に苦味を改善して販売することも可能です。

添加物に焦点を当てて少しお話しすると、ジェネリック医薬品では先発医薬品と全く同じ添加物が配合されているものはほとんどありません。

ジェネリック医薬品の添加物

ジェネリック医薬品の添加剤が先発医薬品と異なることがあります。先発医薬品の製剤特許のため、同じ添加剤が使えない場合や、製剤改良を目的として、先発医薬品と違う添加剤を使用する場合などです。このような場合に、異なる添加剤を理由に、ジェネリック医薬品と先発医薬品の有効性や安全性が違うのではないか、と懸念の声を聞くことがありますが、そのようなことはありません。添加剤の種類が違っても、ジェネリック医薬品と先発医薬品の有効性や安全性に違いがないことは、生物学的同等性試験によって確認しています。

日本ジェネリック製薬協会

基本的にジェネリック医薬品が販売が開始されるタイミングは先発医薬品の再審査期間(ざっくり言うと特許期間のようなもの)が終了してからで、先発医薬品が上市されてから概ね6〜10年が経過した時点です。

しかし、特許が切れた場合でも一部の特許の期間が残っている場合は同じ添加物が使えません。

また、先発医薬品と同じ添加物を使用できたとしても、それぞれの添加物の配合量が開示されているわけではないので「全く同じ」にはできません。

さらに付け加えると、薬を製造する際に添加物を入れる順番や使用している機械などの「製法」や有効成分の「原薬(農作物でいう産地)」が異なるので、成分と規格が同じだったとしてもジェネリック医薬品は後発医薬品と「同じだけど同一ではない」というのが実際のところです。

このように、基本的には先発医薬品と同じジェネリック医薬品はないわけですが例外もあります。

それがオーソライズド ジェネリック(AG)と呼ばれるジェネリック医薬品です。

オーソライズド ジェネリック(AG)

先発医薬品との比較

オーソライズド・
ジェネリック
有効成分同一
原薬同一
添加物同一
製法同一
製造工場同一※(1)
形状・色・味同一
効能・効果同一※(2)
(再審査対象の
適応症除く)
薬価(新発売時)4~5割
第一三共エスファ

※(1)同一でない場合もあります。
※(2)再審査とは、新薬の承認の数年後に行われる有効性や安全性を確認する審査となります。

新薬メーカーから許諾を得て製造した、原薬、添加物および製法等が新薬(先発医薬品)と同一のジェネリック医薬品や、特許使用の許可を得て、優先的に先行して販売できるジェネリック医薬品です。

第一三共エスファ

オーソライズド ジェネリックは有効成分だけでなく、「添加物」はもちろんのことながら「原薬(原料の産地)」や「製法」、製剤によっては「製造工場」まで同一のものがあります。

そう、AGは通常のジェネリック医薬品と違って唯一、「先発医薬品と同一」であるといえるジェネリック医薬品なのです。

先発医薬品と同一であるAGは「今までと同じ薬」であるという安心感から処方する医師や患者に渡す薬剤師、そして患者自身にとっても抵抗が少ないことから一気に普及するというメリットがあります。

医療費削減のためにジェネリック医薬品を少しでも早く・多く先発品から置き換えたい国にとっては打って付けの製剤であるとも言えるでしょう。

参考までにはなりますが、ウィキペディアに「日本におけるAG医薬品一覧」というものがあったので気になる方は見てみてください。

もしかしたら普段服用している薬にもAGが発売されているかもしれません。

ここからは少し脱線になりますが、製薬メーカーの営業マンであるMRからするとこのAGはなかなかに厄介な強敵です。

所属しているメーカーが扱っているラインナップが通常のジェネリック医薬品の場合はAGに勝てる見込みはほとんどありません。

処方元の医師や調剤の薬局長がAGを販売しているメーカーが嫌いな場合や、自分と得意先の関係が強い場合でなければ自社製品の採用は見込めません。

AGは先発メーカーから早期の特許使用の許可が降りた場合は、通常のジェネリック医薬品よりも早く販売を開始することができるので自社品が発売開始の頃には市場が全てAGに置き換わっていたなんてこともあり得ます。

また、所属しているメーカーが先発医薬品を販売していたとしても、AGを自社から販売できなかった場合は自社品がAGに切り替わっていく状況を眺めていることしかできません。

AGは自社にあれば心強く、強豪にあればこれほど手強いものはありません。

ジェネリック医薬品の品質・安定供給問題

ジェネリック医薬品は価格も安く、医療費削減の観点から見ると歓迎される製剤ではありますが「安かろう悪かろう」というように品質を疑問視する声があることもまた事実です。

昨年末に業界を震撼させた小林化工の「イトラコナゾールへのリルマザホン混入事件」や日医工の多品目(多すぎてもはや数えられない)に渡る「超回収問題」などが起こったことから、患者だけでなく医療関係者の中でも先発医薬品へ回帰する流れが少数ではありますが起きています。

当然のことながら小林化工や日医工は極端な例外で、全てのジェネリックメーカーの品質が劣るわけではありません。

医薬品の回収はジェネリックメーカーや先発メーカーを問わず毎日のように行われているので「ジェネリック」だからダメ、「新薬」だから安心ということはありません。

小林化工の問題に関しても「ジェネリックメーカー」だから起きたのではなく、先発後発問わず全てのメーカーで同様の事態が発生する可能性は(ほぼないと思いますが)否定はできません。

全ては製造販売している「企業」次第です。

「ジェネリック」と「新薬」のどちらを選ぶ?

私は幼い頃から高校まで喘息を患っていました。

最初は田辺三菱製薬のテオドールが処方されていましたが、あるタイミングで沢井製薬の「テオフィリン錠」というジェネリック医薬品へ切り替わることになりました。

切り替わった直後はいつもの薬ではないという「不安」を感じていましたが、服用してみると今まで通りに効き目がありました。

ジェネリック医薬品は薬物動態が先発品と同等であるという条件をクリアして販売されているので当然と言えば当然ではありますが、それでも疑念があったことは事実です。

新薬とは溶け方が全く同一ではないので溶出時間や溶出量によっては効果を発揮しない可能性がないわけではありません。

実際に、病院でジェネリック医薬品の採用を検討する際に先発医薬品との溶け方の違いを実際に比較して決定する病院もありました。

(ここだけの話ですが、溶け方が違うジェネリック医薬品は結構あったそうです。)

このような理由からジェネリック医薬品に抵抗がある方も中にはいらっしゃるでしょう。

ですが、そのような場合でも一度だけ試してみてはいかがでしょうか。

仮に効果がなかった場合はすぐに新薬に戻してもらうことができます。

億単位の高額な新薬も続々と発売されており、医療費の逼迫は見えないところに迫ってきているのが国内の社会保障体制の現状です。

私たちの家計はもちろんですが、国家の医療費を削減することは結果的に私たちへの福祉として還ってきます。

ここまでは製薬業界に身をおく立場から申し上げましたが、別の視点も私は持ち合わせております。

それは増大する医療費を認識していながら、ジェネリック医薬品ではなく新薬を選ぶという道です。

新薬メーカーは新薬発売後10年近くで、主力製品の売り上げを8割近く一気に失うことになります。

新薬メーカーはジェネリックメーカと違って「新しい薬を創りだす」ことができる企業です。

ジェネリックではなく新薬を選択するということは、私たちが株式投資以外で唯一新薬メーカーを応援する方法になります。

これからも継続して「新薬」を上市し続けて患者さんへ貢献してもらうためにも、私は製薬企業に就職してからはジェネリックではなく先発医薬品を処方してもらっています。

この話をした理由は「ジェネリック」を選んでも選ばなくても社会に貢献しているということを知って欲しかったからです。

目の前の医療費を削減することも、未来の「新薬」へ投資することも両方大事です。

この記事をきっかけにジェネリック医薬品と先発医薬品を知ってもらえれば嬉しいです。

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